AIの活用方法とは?基礎知識から業務でのAI活用まで紹介
近年あらゆる分野で「AI」という言葉を見聞きするようになりました。AIは、人手不足の解消や業務効率化の決め手ともいわれていますが、自社でどのようにAIを活用できるのかわからず困っている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、そもそもAIとは何なのか、AIの種類や活用方法も含めて解説したうえで、実際の業務でどのように活用されているのかをご紹介します。AIの活用をご検討中の方は、ぜひご参考にしてください。
目次
AIとは何か?
AIとはArtificial Intelligenceを略した言葉で、日本語では「人工知能」と呼ばれます。まずはAIの分類方法を紹介します。
AIの定義
AI(人工知能)は近年大きく注目されており、トレンドワードでも技術的分野の上位にランクインされています。しかし、AIという言葉の定義についてはあまり知らないという方が多いのではないでしょうか。
AIという言葉は、1955年に人工知能研究の第一人者ジョン・マッカーシー教授により初めて提唱されましたが、時を経た現代では以下のようにさまざまな異なる解釈がなされています。
- 「人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術」
松尾豊氏:東京大学大学院工業系研究科准教授 - 「人工的につくった知的な振る舞いをするもの(システム)である」
溝口理一郎氏:北陸先端科学技術大学院大学教授 - 「知能を持つメカ」ないしは「心を持つメカ」である
西田 豊明氏:京都大学大学院情報学研究科教授
このように、AI(人工知能)については明確な定義がなされていないのが実状です。
実際に、AIは明確に定義できないと解釈している研究者もいます。
- 「知能の定義が明確でないので、人工知能を明確に定義できない」
浅田稔氏:大阪大学大学院工学研究科教授
現時点ではあまり厳密な定義に捉われず、複数の研修者の定義を幅広く捉えるなど、ある程度柔軟に考えておいた方が良いでしょう。
特化型と汎用型
AIは以下にご紹介するように大きく分けて特化型・汎用型という2種類に分かれます。AIについて理解を深めるためにも、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
特化型AI
特化型のAIは、特定の課題・タスクに特化したAIのことです。囲碁・将棋・チェス・医療・法律・顧客対応といった特定領域に関してのみ、学習や処理を行うことができます。
現在ではAIを搭載した製品がリリースされていますが、全てこの特化型AIに属します。
汎用型AI
汎用型のAIは、文字通り領域を限定せずさまざまな課題・タスクを処理できるAIのことです。例えば映画やアニメに登場するような人型ロボット・アンドロイドをイメージすると分かりやすいでしょう。
汎用型AIの実現には、人間のように情報を集めて自ら思考・判断を行い進化・成長する能力が必要とされており、現代のテクノロジーではまだ実現に至っていません。
AIが特化型・汎用型どちらに分類されるか判断する際には、「人間に近しい学習・処理が可能であるか」に着目すると、容易に判断できると言えます。
強いAIと弱いAI
AIは、「強いAI」と「弱いAI」に分類されることもあります。これはアメリカの哲学者ジョン・サール氏が提唱した分類方法です。
「強いAI」とは、人間のような自意識を持ち、適切な判断をできる人工知能を指します。対して「弱いAI」は、自意識を持たないため、与えられたプログラムのみ処理する人工知能のことです。
AIを「強いAI」と「弱いAI」に分類するときには、「人間と同様の自意識や知性を持つか」に注目するのが特徴です。
AIとあわせて知っておきたい知識
AIとあわせて知っておきたい言葉が「機械学習」と「ディープラーニング」です。両者は混同されがちなので、しっかりと違いを押さえておきましょう。
機械学習
機械学習とは、与えられた膨大なデータをもとに分析を実施し、ルールやパターンを学習することです。これにより、高い精度で特定のタスクをこなしたり、予測・判断したりできるようになります。
機械学習は、さらに以下の3種類に分類されます。
①教師あり学習
入力値と正解がセットになった学習データをコンピューターに与え、規則性を学習させる方法です。たとえばコンピューターに「イチゴ」の画像を学習させる場合、さまざまなリンゴの画像とセットで「リンゴ」という正解をインプットすることで、どのような特徴があるものがリンゴなのかを学ばせます。
②教師なし学習
教師なし学習は、正解を与えずに、データの傾向を分析させる学習方法です。コンピューターは自分でデータを分析しながら、似たデータをグループ分けするなどして学習していきます。
③強化学習
教科学習は、学習プロセスに関してもコンピューターが自分自身で強化していく学習方法です。選択肢に対してもっともいい報酬を得られるよう、自動的に学習内容を改善していきます。
ディープラーニング
ディープラーニングは、「深層学習」とも呼ばれ、機械学習の一部とされています。人間が深層、つまり「無意識」でおこなう行動を、コンピューターに学習させる方法です。
たとえば教師あり学習では、リンゴを学習させるときには「色を参考にすると良い」と注目すべき特徴を人間が指定します。そうすることで、コンピューターはリンゴの形をしていても紫色のものはリンゴではないと判断します。
ディープラーニングでは、何に注目するといいのかも、コンピューター自身が自分で判断するのが特徴です。与えられた膨大なデータをもとに、リンゴを分類するには色に着目するといいことを、コンピューターが自分で判断し、分類するようになります。
ディープラーニングは、機械学習よりも人間の関与がはるかに少なく、より高度な判断をおこなえるようになるのがメリットです。ときには人間が思いつかなかったような成果を引き出すことさえあるのがディープラーニングの特徴です。
AIを業務に活用するメリット
AIが搭載されたツールは、高度で複雑な処理を24時間休むことなく正確かつスピーディーに行うことができるため、業務効率化・自動化に非常に適しています。
実際の業務において得られる具体的なメリットには、次のようなものがあります。
- 人手不足・マンパワー不足の解消
- 生産性向上
- サービス・サポート品質の向上
- コスト削減
- 顧客満足度・従業員満足度の向上
- ミス・抜け漏れの低減
AIはその特性・メリットを活かして、例えば次のようなシーンで活用されています。
- セールス
膨大なデータをもとに顧客ニーズに合った的確な打ち手をアドバイス
必要書類を自動作成 - マーケティング
膨大なデータを自動分析
データをもとに改善施策を提案 - バックオフィス
採用活動の自動化
問い合わせ対応の自動化
近年では労働人口の減少やビジネス環境の変化といった課題に対応すべくDX化が強く推奨されていますが、AI搭載ツールはDX化の推進に寄与できるとして大きな注目を集めています。
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主要なAIの活用方法3選
ここではAIがどのように活用されているのか、主要な活用方法を3つご紹介します。
自然言語処理
自然言語処理とは、人間が日常的に話したり書いたりする言葉(自然言語)をコンピューターで分析・処理を行う技術のことです。「形態素解析>構文解析>意味解析>文脈解析」というプロセスを踏むことで処理を行います。
コンピューターが理解・処理できるように開発されたプログラミング言語とは異なり、自然言語は多種多様・複雑難解であることに加えて曖昧さもあるため、コンピューターに自然言語処理を行わせることは容易ではありません。
AI技術を活用すれば、ディープラーニングにより自然言語データを学習させることで、統計的・確率的に言葉の意味・内容を理解して処理を行うことが可能です。
自然言語処理は、主に音声・テキストを活用する業務効率化に大きく寄与すると期待されており、実際に検索エンジン・翻訳ソフト・チャットボット・AIアシスタントなどで積極的に活用されています。
画像認識
画像認識とは、画像を見て特徴をつかみ、対象物が何なのかを識別する技術を指します。
人間は写真を見ただけで、何が、どんな場所で撮影されたのかを自らの膨大な経験や知識をもとに瞬時に判断できます。しかし、コンピューターは人間のように蓄積された知識や経験を持たないため、従来の技術では対象物を判断することはできません。
AI技術のディープラーニングを活用すれば、大量の画像データから対象物の特徴などを学習することが可能となり、そのデータをもとに画像を識別することができるようになります。
例えば以下にご紹介するように、私たちの生活の至るところで活用が進められています。
- 防犯カメラからの人物特定
- 医療分野における病巣の発見
- 製造業での検品・異常検知
- スマホ・PC等の顔認証システム
画像認識はAI技術のなかでも特に技術の発達や活用が著しい分野であるため、AI技術に着目している方は常に動向を意識しておくことをおすすめします。
音声認識
音声認識とは、コンピューターが人間の声を聞き取り、意味や内容を反映したテキストデータへと変換する技術を指します。
人間であれば音声の意味を自然に理解することができますが、基本的にコンピューターは音声の意味や内容を理解することはできません。そこでAI技術の出番です。
AIを活用した音声認識であれば、入力された音声データのデジタル化を行い、蓄積された膨大な音声データ辞書から条件に合うものを選び出すことで、音声認識の結果として出力することができます。
より自然で高精度な音声認識を行わせるためには、AIが使用するための音声データを充実させることが重要となります。
音声認識は、コミュニケーションの基本である音声を取り扱うため、デバイスの操作性やアクセシビリティ向上に役立つと期待されている分野。先にご紹介した自然言語処理と組み合わせることで、音声による文字入力やデバイスの操作を実現することが可能となります。
実際に、Siri・AlexaのようなAIアシスタント・リアルタイム翻訳アプリ・音声入力システムなどの活用事例が見られ始めています。
日々の業務におけるAIの活用方法
ここからは、日々の業務においてAIをどのように活用できるのか、具体例をご紹介していきます。
問い合わせ対応への活用
多くの企業では、毎日社内外から多くの問い合わせが寄せられます。なかには問い合わせ業務がコア業務を圧迫して困っている会社も多いのではないでしょうか。
そういった場合、チャットボットを活用すれば課題解決につなげることが可能です。チャットボットとは、チャット(chat=会話)とロボット(robot)を組み合わせた言葉で、自動応答システムを指します。チャットボットには、AI非搭載の「シナリオ型」と、AIを搭載した「AI型」があります。
AIが非搭載のシナリオ型は、ウィンドウに提示された選択肢をユーザーが選ぶことで分岐し、回答にたどり着く方式です。AIが搭載されていないため機械学習することはなく、あらかじめ設定したシナリオに沿った回答しかできないのが特徴です。
対してAI型は、ユーザーが入力した質問からキーワードを拾い出し、AIがもっとも適した回答を返す方式です。質問の理解には自然言語処理技術が用いられています。
チャットボットを導入して問い合わせへの一次対応を任せると、顧客や社員が自分で問題を解決できるようになるので、問い合わせ業務を大きく削減できるようになります。
HR分野での活用
AIは、HR分野でも活用されるようになってきました。HRとは、Human Resourceを略した言葉で、日本語では人事を意味します。
たとえば新卒採用で大量のエントリーシートが送付されるような企業では、審査にAIを導入することで、採用担当者の負担を軽減できます。AIを導入すると、以下のような作業の自動化が可能です。
情シスのアウトソーシングには、以下の4つの方法が考えられます。
- エントリーシートの情報から学生の属性スコアを自動判定
- 笑顔が多く好印象を与える人材の見極め
- 志望動機に書かれたテキストから会社合致度を予測
- 適性診断結果や学生の属性スコア、面接の評価スコアから最終面接者を選別
このような作業をAIに任せれば、人事担当者は人でなければ判断できないことを精査するだけに集中できるようになるのです。
営業・マーケティング分野での活用
営業やマーケティング分野でも、AIは活用されています。
たとえば顧客属性や購買履歴など、社内に点在するさまざまな顧客情報を1箇所に集約・蓄積してAIに分析させると、確度の高い見込み客の選別や、顧客の傾向にあわせた商品をレコメンドできるようになります。
最近はAIを搭載したSFA(Sales Force Automation)やMA(Marketing Automation)、CRM(Customer Relationship Management)といったツールが多く提供されているので、活用すると効率的に営業やマーケティング活動を進められます。
製造分野での活用
製造分野でも、AIの画像認識技術の活用が進んでいます。
たとえば不良品の選別や異物混入を防ぐには、AIの画像認識技術の導入が役立ちます。従来はこういった作業は人間が目視でおこなっていました。しかし人間は機械と違い、その日の体調やモチベーションなどの影響で、パフォーマンスにむらが発生するものです。
その点機械であれば、疲れや精神的影響を受けることなく、正確に選別作業をおこなうため製品の品質を常に一定に保てます。学習データを蓄積することでさらに精度が高まるのもメリットです。
物流分野での活用
物流分野でも、AIの活用はもはや欠かせないものになっています。
たとえば大量の受発注が発生するような通販業界では、数え切れないほどの入出庫作業や検品業務、荷物の仕分けなどが日々おこなわれます。そういった業務も、画像認識AIを導入すれば、自動化が可能です。
ほかにも、渋滞情報をもとにドライバーの配送ルートを最適化したり、配車計画を立てたりするのにもAIが活用されています。
まとめ
AIは、特化型と汎用型に分類されますが、現在主に活用されているのは特化型となっています。AIは機械学習やディープラーニングすることで、自ら知識を高めていくのが特徴で、さらに人間と違って疲れを知らず常に稼働できるため、さまざまな業界で導入されるようになりました。
人出不足や長時間業務が課題となっている企業では、こうしたAIの活用が課題解決の糸口になることもあります。本記事を参考にAIツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。