セールスイネーブルメントの基本的な考え方や取り組み方をご紹介
近年、日本においてもセールスイネーブルメントの考え方が取り入れられ始めています。しかし、どのような考え方なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、セールスイネーブルメントの基本的な考え方や取り組み方をご紹介します。
目次
セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとは「営業組織の効率化や組織力向上をはかるための取り組み」を指し、アメリカでは古くから取り組まれてきた考え方で、日本でも注目され始めています。
セールスイネーブルメントではCRMやSFAといった営業ツールの導入や、日常的な営業活動のプロセス管理、成果分析、研鑽のための営業研修など、営業組織の組織力を底上げするためのさまざまな施策を総合的に設計します。加えて目標を達成できているかどうかを定期的に振り返り、施策別の貢献度を数値で表す取り組みが行われます。
このようにデータ化された数値を分析することで、組織の営業活動を最適化することにつながるでしょう。
セールスイネーブルメントが注目されている背景
セールスイネーブルメントが注目されている理由のひとつに、「どのような企業でも成果を出せる可能性が高い取り組みであること」が挙げられます。
企業の営業活動において、大きな問題は主に2つあります。それは「営業活動が担当者に一任されてしまい、属人化が進んでいること」「顧客のニーズが細分化しており、効果的なアプローチができていないこと」です。
営業活動の属人化解消
例えば担当者が営業活動に行き詰まって組織の「メンバーにアドバイスを求めたい」と感じても、周囲は案件を詳しく把握していないため、改善するためのポイントを指摘できないでしょう。そのため担当者はいつまでも状況を打破できない状況が続き、期待どおりの成果を上げられなくなってしまう可能性があります。
そこでセールスイネーブルメントを導入すると組織の案件やノウハウを共有できるようになるため、担当者の属人化が解消されて対応できる人員が増え、売上アップのための改善施策を立てやすくなるといえます。
他にも、営業活動が属人化して特定の担当者に一任されてしまうと、急な休養や異動、退職などによって担当者が不在になった途端に現場の従業員が混乱するでしょう。この点も、セールスイネーブルメントの導入によって解決できると考えられます。
多様化する顧客ニーズの把握
さらに顧客のニーズが細分化されることによって顧客のニーズを掴み切れなくなってしまう課題も、セールスイネーブルメントで解消できます。
セールスイネーブルメントにおいてはMAツールやCRM、SFAなどの営業活動をサポートするツールを積極的に導入してデータ活用を行います。顧客ごとの特徴をツールによって詳細に分析することで多様化するニーズを的確に把握し、適切なアプローチを行えるようになるでしょう。
セールスイネーブルメントのメリット
セールスイネーブルメントを取り入れることで、営業活動の効率化やノウハウの共有、教育体制の整備などさまざまなメリットが期待できます。
ここでは、それぞれのメリットについて詳しくご紹介します。
チームでノウハウを共有できる
セールスイネーブルメントではツールも取り入れながら顧客のデータを全体で管理するため、チームでノウハウを共有できます。
営業担当の属人化が進んでいる現場では、作成した提案資料や営業ツールが担当者の手元で止まってしまうことも多くあります。その結果、次に同じような案件が発生した場合に他の営業担当が「社内に流用できる資料があることを知らず、また一から資料を作成する」といった不要な工数を踏んでしまうことも少なくありません。
ノウハウが共有されていれば過去の資料を活用でき、営業にかかる工数を大幅に削減できます。
加えて共有された資料やツールを第三者目線で改善することで、さらに効果の高いツールに仕上げることも可能になるでしょう。
教育体制を整備できる
新任の営業担当者を教育する方法としては、「OJT」の形をとるケースが比較的多いといえます。しかしOJTにおいては教育担当者となる人材のポテンシャルが大きく影響するため、誰でも同じように十分な教育を行えるわけではないというデメリットがあります。
セールスイネーブルメントによってチーム全体のノウハウを集めて管理し、そのデータを元に教育プランを整備すれば、どのようなタイミングで新任の営業担当者が加入しても安定的な教育体制を提供できるでしょう。
セールスイネーブルメントを行う際のポイント
セールスイネーブルメントを行う際には、おさえておきたいポイントがあります。次の5つのポイントを意識しながら、効果の高いセールスイネーブルメントを行えるように準備を進めましょう。
1.成果の指標を具体的に定義する
従業員が営業活動に携わる際、成果の指標を具体的に定義することも重要です。成約につなげるための「行動」と「スキル」を設定し、それぞれの従業員が目標に合わせたレベルを目指すことで、一人ひとりの営業力の底上げにつながり組織全体の成果を高められます。
成果の指標が具体的に定義されると、社内の営業プロセスが標準化されて誰もが同じ成果を上げやすくなるといえるでしょう。さらに行き当たりばったりの指導がなくなり指標に沿った教育を行えるようになるため、マネジメントもスムーズになると考えられます。
2.従業員の貢献度を評価する
セールスイネーブルメントにおいては、営業活動のさまざまなプロセスが数値化されます。数値化された指標を活用して、従業員が「それぞれのプロセスにどの程度貢献しているのか」を適切に評価することが大切です。
単に営業活動の成果だけに注目するのではなく、「営業ツールの改善」「新規ツールの導入」「プロセスの改善」など、組織の営業活動全体に貢献しているかどうかを評価します。
さらに一人ひとりの目標をあらかじめ設定しておき、定期的に進捗状況を確認するとともに、時にはマネジメントの責任者と従業員との間で目標の見直しを行うことも重要です。
3.属人化を防ぐ
前述のとおり営業活動は属人化しやすいといえますが、セールスイネーブルメントにおいては特に「属人化を防ぐ」という点を意識して運用しましょう。
案件情報やノウハウを担当者個人で占有していては、結果的に組織の他のメンバーの工数を増大させることにもつながってしまいます。営業に関連するノウハウを常に共有できる体制を整備して、担当者以外の誰でも同じ成果を上げられるような環境を生み出すことが大切です。
4.専門部署を設置する
セールスイネーブルメントを成功させるためには、専門部署を設置することをおすすめします。
セールスイネーブルメントは営業部門の組織力を底上げするための取り組みではありますが、MAツールの導入にはシステム部門も関わることになり、加えて研修制度の整備などでは人事部門と連携する必要が生じるケースもあります。
このように営業部門以外のさまざまな組織と連携しなければならない場面が数多くあるため、営業部門がセールスイネーブルメントを担当するのではなく、組織改善のための専門部署を設けた方が取り組みをスムーズに進めやすくなるといえます。
5.営業ツールを利用する
セールスイネーブルメントにおいては、顧客情報や案件情報を組織全体で管理していくことが重要になります。しかしアナログな管理は属人化を増長する原因になりやすく、組織全体で営業部門の現状を把握することは容易ではありません。
案件情報やアプローチ内容、商談の進行状況など多くの情報を可視化するためには、MAツールやCRM、SFAなどの営業ツールを積極的に利用することをおすすめします。
ツールによって可視化したデータを分析することで組織内で営業ノウハウを共有しやすくなり、顧客のニーズも明確になることでより成果を上げやすい組織作りを推し進められるでしょう。
まとめ
セールスイネーブルメントは営業部門の組織力の底上げに効果的な考え方であり、日本でも少しずつ広まってきています。業種や業態に関わらず比較的効果を出しやすい取り組みなので、積極的に導入するといいでしょう。
セールスイネーブルメントを行うのであれば、専門部署の設置や属人化の防止、社内におけるノウハウの共有など、さまざまなポイントを意識して準備を進めることが大切です。加えて、必要に応じて営業ツールの利用も検討することをおすすめします。