カスタマーサクセスの課題には何がある?基礎知識から対応策までを解説!
カスタマーサクセスは、「月額いくら」で継続するSaaS(Software as a Service:ソフトをサービスとするもの)が台頭してきてから、欠かせない概念となりました。
ただ、日本においてSaaSの歴史/浸透はまだ浅く、そのため、カスタマーサクセスもまた比較的新しいものです。
そこで今回は、カスタマーサクセスの基本知識や導入する意味、カスタマーサービスとの違いなどを説明します。
目次
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスとは、顧客満足を引き出すためのものです。
月額制のSaaSでは、大口顧客の獲得はもちろんのこと、比較的安価なサービスの利用者数を積み上げることも重要です。
そのため、「顧客満足度」をいかにして向上させるか、が重要なのです。
サービスを提供する企業側は、「ビジネスを拡大すること」を目的としてカスタマーサクセスに取り組みます。
利用者の満足が高まらないことには、利用継続はないかもしれません。
顧客の離脱を防止するため、積極的に顧客に「満足できる仕組み」を取り入れるのがカスタマーサクセスです。
では、ここからはカスタマーサクセスについて理解を深めるため、基礎用語について解説します。
関連記事はこちら顧客満足度(CS)を向上させる施策やそのポイントとは?
ハイタッチ
ハイタッチとは、単価の高い顧客に対する個別の対応を指します。
課題に対する提案、導入前にキーパーソンに行う指導/アドバイス、導入にあたってのカスタマイズ、導入時に実施する社内勉強会、運用が始まってからのユーザー個別サポートなど、「その企業ならでは」のプログラムを組み対応する必要があります。
ロータッチ
ロータッチとは、単価がハイタッチ客程ではないものの、一定の活用サポートが必要な客層に対して行う対応です。
たとえば、ユーザー会、ワークショップ、他企業事例の勉強会といったものが該当します。
テックタッチ
テックタッチは、サービス(システム)内のサポートの仕組みのことで、ユーザー個別に対するアプローチを目指すものです。
個別対応といっても、サービス内に「チュートリアル」「ウェビナー」「ユーザー用SNS」「チャット」などを組み込むことで、顧客の学びをほぼ自動で解決するよう促すのがテックタッチです。
オンボーディング
オンボーディングとは、サービス利用開始のタイミングから、利用定着に至るまでの期間やプロセスのことを指します。
この期間中は、より積極的にユーザーにアプローチする必要があるでしょう。
精度の高いオンボーディングを実現するためには、基本的なテックタッチを中心に、必要に応じてメールやシステム内ポップアップ画面を使って「こんな機能があります」「こういうときにはこう操作します」といった誘導が必要です。
ハイタッチ客の場合なら、電話や訪問でサービス利用数が上がらない機能について説明するなど、アクティブなアプローチが求められるかもしれません。
アップセル
アップセルとは、契約時点よりも単価の高いサービスに変更してもらう、もしくはオプションを追加契約してもらうことを指します。
基本的なサービスに満足してもらわなければアップセルを促すことはできません。
クロスセル
クロスセルとは、ユーザーが現在利用している商品やサービスに関連する商品をおすすめし、顧客単価を上げるための施策です。
よく見るクロスセルの事例は、ECサイトで「この商品を買った人は次の商品も買っています」というおすすめ商品の表示です。
関連商品やサービスを見せることで、「これを組み合わせたらどんなことができるだろう」とイメージさせることが大切です。
SaaSの場合なら、「これとこれを組み合わせて使うと、〇〇機能が利用できます」「こんなシーンで便利です」と提案するとよいでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスとは、契約前から利用中、そのサービスに関連するすべての期間において「成功体験」を積んでもらうための施策です。
一方、カスタマーサポートとは、ユーザーが使い方に困ったときや、契約前の質問など、特定のタイミングで顧客/見込み客に関与するものです。
カスタマーサクセスを「顧客満足度を最大化して利用を定着化させる」「より大きなサービスにアップグレードしてもらう」「ついで買いをしてもらう」ものとするなら、カスタマーサポートは「顧客の疑問/苦情を解消するもの」といえるでしょう。
カスタマーサクセス施策によくある課題
カスタマーサクセスを実施しようとしても、なかなかスムーズにいかない場合、以下のような課題が考えられます。
顧客側の課題、企業側の課題に分類できますが、代表的なものをご紹介しましょう。
【顧客】顧客自ら疑問を解消できず、不満を抱く
カスタマーサクセスを実施するにあたり、顧客側の抱く不満/課題のうち大きなものが「自分で問題解決できない」というものです。
ユーザーがサービスを利用するのは、自分の時間にゆとりのあるときであるため、全ユーザーで考えた場合「24時間・365日」でしょう。
ビジネス系SaaSの場合、多く使われるのは平日でしょうから、カスタマーサポート営業時間内です。いざとなれば「電話をする」という選択肢がのこされています。
ただ、電話をかけることにためらいがある、疑問が生じたのがカスタマサポートセンター営業時間外だった、ということも少なからずあるでしょう。
電話をかけるよりも自らの手で問題解決したい、自分もだれの手も煩わせたくないと思う顧客心理を持つユーザーの場合、「自分で解決できないこと」に不満を抱いてしまうこともあるでしょう。
【顧客】顧客が自分の置かれている状況をうまく説明できない
サービスを使い始めたタイミングにある顧客、もしくはサービスそのものが新しいジャンルのもので「何からどう操作すればよいかわからない」顧客の場合、「だれに、どのように相談すればよいのかわからない」という状況は大きなストレスとなるでしょう。
SaaSに慣れているユーザーならば、質問するにしても、クレームを入れるにしてもある程度その方法について知っているはずです。
ただ、SaaSそのものに慣れていないユーザーの場合、自分がどのような状況に陥り、どのような助けが必要なのかうまく説明できないこともあります。
これはすべて顧客側の課題とは言い切れませんが、できれば企業側が先回りしてこの状況を打破する手段を設けておくといいでしょう。
【企業側】顧客に応じたサポートの使い分けができない
顧客の置かれている状況(契約前/契約後/利用開始から一定期間経過している)によって、サポートすべき事柄は変化します。
一律のサポートでは多様な問題を解決するのは難しいでしょう。
この課題をクリアするためには、顧客の状況に合わせたサポート内容を事前に準備し、うまく運用していく必要があります。
もしも顧客の状況ごとのサポート内容を切り分けておかなければ、顧客の状況に応じた最適なサポートをスピーディに行えず、顧客は満足どころか不満を抱いてしまうこともあります。
【企業側】カスタマーサクセスチーム全体での対応の難しさ
カスタマーサクセス部門、もしくはカスタマーサポート部門に寄せられる「問い」には、チームで対応すること、としている企業もあるでしょう。
その場合、「チーム内のだれもが対応できる仕組み」が重要です。
なぜならば、顧客は自分の持つ疑問に「だれでも答えられるもの」「サービス提供会社なら教えてくれるもの」と思っていることが一般的だからです。
カスタマーサクセスチーム全体で対応できないという課題は、顧客を落胆させることにつながることもあります。
顧客情報を確認しながらユーザーがどんな状況にあるのかを知り、必要と考えられる回答/提案ができる仕組みを社内に作っておく必要があります。
課題の洗い出しとその解消に向けて提案をするハイタッチ客以外、チーム内のだれもが顧客対応ができ、より満足感を引き出せるための仕組みづくりをしておくことが、カスタマーサクセスには必須といってもよいでしょう。
ラクスが提供する「メールディーラー」では、メールやチャット、SNSに来る顧客問い合わせを一元管理できます。また、誰がどの問い合わせを対応しているかがひと目でわかるので、対応漏れや二重対応の防止につながります。
よく使うテンプレートを全員で共有できるメールテンプレート機能や、よくある質問やマニュアルを共有できるQ&A機能により、対応者によるメール対応のレベルを平準化できるため、カスタマーサクセスの成果向上にも寄与します。
詳細を知りたい方は以下をご確認ください。
カスタマーサクセスにまつわる課題の一部はITツールの活用で解決できる
カスタマーサクセスにまつわる課題はいくつかありましたが、その一部はITツールの導入で解決できることもあります。
例えば、日々の問い合わせ対応に時間がかかっていて、迅速なフォローができていないという場合は、問い合わせ管理システムやチャットボットの導入がおすすめです。また、ユーザー同士が意見交換するなどコミュニケーションができるプラットフォームを提供できれば、ユーザーコミュニティで顧客の課題を解決することもできます。こうしたコミュニティ管理ができるツールを導入するのも問い合わせ対応に役立ちます。
まとめ
カスタマーサクセスとは、顧客の満足を引き出すことにより、自社のビジネスを拡大する「顧客/企業にとって相互にとってメリットのあるもの」です。
ただ、カスタマーサクセスに取り組むには、事前に把握/解決しておかなければならない課題がありました。
大きくは、企業側の課題、顧客側の課題に分けられますが、顧客側の課題にも先回りして丁寧に対応することが、カスタマーサクセスの本質とも言えます。
解決の糸口として、ITツールの導入が役立つこともありますので、本記事を参考に自社の課題と解決策を照らし合わせて、適切な対策を行いましょう。